第370問の解答
問題[空間図形]
左図のような、厚紙を切って作った合同な菱形がたくさんあります。この菱形を何枚か使うと、次のような条件を満たす立体を作ることができます。
- 菱形の鋭角(図のB、D)の頂点が5つ集まって、1つの頂点が出来る。
- 菱形の鈍角(図のA、C)の頂点が3つ集まって、1つの頂点が出来る。
- 凹んでいない立体である。
このとき、完成した立体について、面の数、および頂点の数は、それぞれいくつでしょうか。
解答例1
中村明海さん、CRYING DOLPHINさん、トトロ@Nさん、あ〜く@旧Nさん、namaさん、nさん、他
求める立体は、結論からいうと下記のような菱形30面体になります。
面の数は、上から
青:5個、 赤:5個、 緑・黄:5個ずつ、 赤:5個、 青:5個
の合計20個。頂点の数は、上から、
T1、A1〜A5、B1〜B5、C1〜C5、D1〜D5、E1〜E5、F1〜F5、T2
の合計32個となります。
答: 面=30個、頂点=32個
以上
さて、この菱形30面体は、正20面体または正12面体を元に、各面の中心を持ち上げることで得られます。
実は、正20面体と正12面体の双対性から、どちらも同じ立体が得られるのですが、詳しいことは省略します。
(正20面体に外接する場合)
面の数 ・・・ 正20面体の各辺と、菱形の長い対角線(Lとします)が1:1に対応するので、正20面体の辺の数と同じ30個
頂点の数 ・・・ 正20面体の頂点と共通のもの12個と、各面の中心を持ち上げた20個の合計32個
(正12面体に外接する場合)
面の数 ・・・ 正12面体の各辺と、菱形の短い対角線(Sとします)が1:1に対応するので、正12面体の辺の数と同じ30個
頂点の数 ・・・ 正12面体の頂点と共通のもの20個と、各面の中心を持ち上げた12個の合計32個
ここまでで、菱形30面体が条件を満たす立体の1つであることは示されます(十分条件)。
さて、求める立体は菱形30面体しかないこと(必要条件)は、どう示せばよいでしょうか?
正20面体の例で考えてみましょう。 ・・・ 図1まず、求める立体で鋭角の頂点5個が集まったある頂点をとりT1とします。
また、T1を含む5個の菱形に関して鈍角のものをA1〜A5、鋭角のものをB1〜B5とします。
ここまでで5個の菱形が星形状に集まった図形が一意的にできます。次に、A1〜A5には、それぞれ菱形が2個ずつ集まっているので、もう1個ずつは一意的に決まります。これらの対角線上の頂点をC1〜C5とします。
すると、△T1B1B2、△T1B2B3、△T1B3B4、△T1B4B5、△T1B5B1の各辺は、いずれも長さはLに等しいので、正三角形であることが分かります。
正三角形5枚を1つの頂点に集めてできる図形は一意的に決まるので、求める立体のここまで決まった部分は、Lを1辺とする正20面体の上に乗っていることが分かります。
以下、同様に求める立体の残りの菱形をつなぎ合わせていくと全ての頂点がきまり、ちょうどこの正20面体の上に乗っていることが分かります。
正12面体の場合も、同様に示されます。
(参考)菱形30面体の菱形は対角線の比率が黄金比となること
上の図は、図1を真上から見た図で、各辺の長さは水平に見た長さで考えます。
いまT1B1の長さを1とおくと、T1B1とA1A5の中点は菱形の中心で一致します。よって、
A1A5=T1B1×1/2×tan36°×2=tan36° ・・・ (1)また、B1B2とA1C1の中点は菱形の中心で一致し、C1はT1A1の延長上にあるので、
B1B2=T1B1×sin36°×2=sin36°×2 ・・・ (2)さて、A1A5およびB1B2は、どちらも水平なのでそれぞれS、Lの長さと等しくなります。
よって、
L/S=(sin36°×2)/tan36°
=cos36°×2
=(1+√5)/4×2
=(1+√5)/2
を得ます。
まさに、これは黄金分割の比率に他なりません。以上は、長野美光さんのホームページ(ヨッシーの算数・数学の部屋)を参考にさせて頂きました。
解答例2
長野 美光さん、小西孝一さん、M.Hossieさん、すてっぷさん、
takaisaさん、naopapaさん、ねこやんさん、kasamaさん、遠い山のぽきょぽんさん、DrKさん、他
面(Face)の数、点(Vertex)の数、辺(Edge)の数をそれぞれF、V、E とします 。
F、E、Vに関する方程式を考えて解いてみましょう。
各面に対して内角が鋭角の頂点(●)が2個、鈍角の頂点(●)が2個ずつあります。
鋭角の頂点1個を5つの面が共有し、鈍角の頂点1個を3つの面が共有していることから、
V=F×2/5+F×2/3=F×16/15 ・・・ (1)
が得られます。また、各面に4辺がありますが、1つの辺を2つの面で共有していることから、
E=F×4×1/2=F×2 ・・・ (2)
が成り立ちます。(1)、(2)から面の数Fは15の倍数となりますが、これだけでは決まりません。
ここで、多面体に関するオイラーの定理から、
V+F−E=2 ・・・ (3)
が成り立ちます。(1)、(2)の式を(3)に代入して、
F×16/15+F−F×2=2
F×1/15=2
よって、F=2×15=30が得られます。これを(1)、(2)に代入して、
V=30×16/15=32、
E=30×2=60
が得られます。なお、ここまでは条件を満たす立体が存在したらという必要条件のみの議論なので、条件を満たす立体が確かに存在する(十分条件)ということについて別途示す必要があります。
(その他の解法)
- サッカーボール、おわんをヒントに考えた ・・・ ミミズクはくず耳さん、ちこりんさん、emikoさん、 他
- 紙を切って実際に工作した ・・・ トトロ@Nさん、土居 千珠さん、すてっぷさん、 他