第57問の解答
1.問題 [場合の数・数列]
左図のような、正四面体の頂点Aに今います。 1秒後には、他の3つの頂点のどれかに移動します。
移動のしかたには、特に制限はありません。例えば次の1秒後に再び元の頂点Aに戻ってもかまいません。ただし、同じ場所に止まってはいけません。
このように移動を続けて、7秒後に頂点Aにいるような動き方は何通りあるでしょう?
2.解答例1(長野 美光さん、kuri他)
移動できる状況を図で表すと下図のようになります。
そこで、n秒後に頂点A、頂点B、頂点C、頂点Dに移動できる場合の数をan、bn、cn、dnとします。
すると上図から、
an+1=bn+cn+dn ・・・ (1)
bn+1=an+cn+dn ・・・ (2)
cn+1=an+bn+dn ・・・ (3)
dn+1=an+bn+cn ・・・ (4)
と表せます。ただし、初期値はa0=1、b0=0、c0=0、d0=0です。これらの式に従って、順次計算していくと下表のようa7=546になります。
答:546通り
以上
3.解答例2(あれふさん、井合宗太郎さん他)
前述の漸化式を加えて、(1)+(2)+(3)+(4)より、
an+1+bn+1+cn+1+dn+1=(an+bn+cn+dn)×3
となるので、an+bn+cn+dnは、初項a0+b0+c0+d0=1で公比が3の等比数列となります。従って、an+bn+cn+dn=3nとなります。従って、
an+1+an=(bn+cn+dn)+an=3n ・・・ (5)
an+1=3n−an ・・・ (6)
が得られます。(6)を用いて、順次計算して、下表のようにa7=546が求まります。
4.解答例3(B2さん他)
(5)式を用いて、anの一般式を求めましょう。
(補題)次のような漸化式(線型漸化式といいます)
an+m+pm-1an+m-1+pm-2an+m-2・・・+p0an=0
に対して、
xm+pmxm-1+pm-1xm-2・・・+p1=0
の解をα1、α2、・・・αmとします(重根はないものとします)。
このとき、
an=A1α1n-1+A2α2n-1+・・・+Amαmn-1
と表すことが出来ます。
(方法1)
(5)より、
an+1−1/4×3n+1=−(an−1/4×3n)
を得るので、an−1/4×3nは、公比−1、初項a0−1/4×30=3/4なる等比数列。
よって、an−1/4×3n=3/4×(−1)nとなり、
an=1/4×3n+3/4×(−1)n
が得られます。(方法2)
(5)より、
an+2+an+1=3n+1 ・・・ (7)
(7)−(5)×3より、
an+2+an+1−(an+1+an)×3=0
よって、an+2−2×an+1−3×an=0なる線型漸化式を得る。従って補題より、x2−2x−3=0をまず解きます。
(x−3)×(x+1)=0となり、x=3、x=−1が得られます。
よって、 an=A1×3n+A2×(−1)nを得ます。
ここで、A1、A2は、
a0=A1+A2=1、a1=3×A1−A2=0
から、A1=1/4、A2=3/4を得ます。
従って、an=1/4×3n+3/4×(−1)nとなります。
(補題の証明1)m=3とします。
an+3+p2an+2+p1an+1+p0an=0
に対して、x3+p3x2+p2x+p1=0 の解をα1、α2、α3とします。
このとき、
bn=A1α1n-1+A2α2n-1+A3α3n-1とします。
ただし、A1、A2、A3は、
A1+A2+A3=a1、A1α1+A2α2+A3α3=a2、A1α12+A2α22+A3α32=a3
を解いて求めることとします。証明は数学的帰納法を用います。
(1)b1=a1、b2=a2、b3=a3は明らか。
(2)n≦k(ただし、k≧3)のとき、bn=anが成り立つとします。
n=k+1のとき、
bn=A1α1k+A2α2k+A3α3k
=A1α1k-3×α13+A2α2k-3×α23+A3α3k-3×α33
=−A1α1k-3×(p3α12+p2α1+p1)+A2α2k-3×(p3α22+p2α2+p1)
+A3α3k-3×(p3α32+p2α3+p1)
=−p3×(A1α1k-1+A2α2k-1+A3α3k-1)−p2×(A1α1k-2+A2α2k-2+A3α3k-2)
−p1×(A1α1k-3+A2α2k-3+A3α3k-3)
=−p3×bk−p2×bk-1−p1×bk-2
=−p3×ak−p2×ak-1−p1×ak-2(仮定より)
=ak+1
よって、n=k+1のときもbn=anが成り立つ。以上から、数学的帰納法により、全てのnについて、bn=anが成り立つ。
(補題の証明2)m=2とします。
an+2+p1an+1+p0an=0に対して、x2+p2x+p1=0 の解をα1、α2とします。
2次方程式の根と係数の関係より、α1+α2=−p2、α1×α2=p1となります。これから、漸化式を次のように変形します。
an+2−(α1+α2)an+1+α1α2an=0
an+2−α1an+1−α2(an+1−α1an)=0
これは、an+1−α1anが公比α2となることを表しているので、
an+1−α1an=C1α2n-1 ・・・(8) と表せます。ただし、C1は定数。
まったく同様にして、
an+1−α2an=C2α1n-1 ・・・(9) と表せます。(9)−(8)より、
(α1−α2)an=C2α1n-1−C1α2n-1
α1とα2は異なるので、
an=C2/(α1−α2)α1n-1−C1/(α1−α2)α2n-1
A1=C2/(α1−α2)、A2=−C1/(α1−α2)とおけば、
an=A1α1n-1+A2α2n-1 と表せます。以上
(参考問題:武田 浩紀さんによる)
1秒前と同じ頂点には戻ってはいけないという制限を加えた場合、7秒後に頂点Aにいるような動き方は何通りあるでしょう? 移動できる条件は、下図のように1秒目の状態に影響されます。
そこで、1秒前にはBにいて現在Aにいる場合の数をba(n+1)のように表すことにします。
漸化式および初期値は、次の通り。
ba(n+1)=cb(n)+db(n)
ca(n+1)=bc(n)+dc(n)
da(n+1)=bd(n)+cd(n)ab(n+1)=ca(n)+da(n)
cb(n+1)=ac(n)+dc(n)
db(n+1)=ad(n)+cd(n)
ac(n+1)=ba(n)+da(n)
bc(n+1)=ab(n)+db(n)
dc(n+1)=ad(n)+bd(n)ad(n+1)=ba(n)+ca(n)
bd(n+1)=ab(n)+cb(n)
cd(n+1)=ac(n)+bc(n)ba(1)=0
ca(1)=0
da(1)=0ab(1)=1
cb(1)=0
db(1)=0ac(1)=1
bc(1)=0
dc(1)=0ad(1)=1
bd(1)=0
cd(1)=0この漸化式に従って順次計算していけば、下表のようになる。
よって、a(7)=ba(7)+ca(7)+da(7)=18+18+18=54となる。
答:54通り
(参考問題の漸化式から一般項を求める)
上記図より、ba(n)=ca(n)=da(n)(=p(n)とおく)、ab(n)=ac(n)=ad(n)(=q(n)とおく)、およびそれ以外(すべて等しくr(n)とおく)の3種類に分かれます。
これから、p(n)、q(n)、r(n)に関する漸化式、初期値は次の通りになります。
p(n+1)=2×r(n) ・・・ (11)
q(n+1)=2×p(n) ・・・ (12)
r(n+1)=q(n)+r(n) ・・・ (13)p(1)=0
q(1)=1
r(1)=0
(11)より、r(n)=1/2×p(n+1)、r(n+1)=1/2×p(n+2)、
(12)より、q(n)=2×p(n−1)となるので、これらを(13)に代入して
1/2×p(n+2)=2×p(n−1)+1/2×p(n+1)
nをn+1に置き換え整理して、
p(n+3)−p(n+2)−4×p(n)=0 を得る。前述の補題より、まずx3−x2−4=0を解きます。
(x−2)×(x2+x+2)=0となり、x=2、x=(−1±√7i)/2が得られます。
α=(−1+√7i)/2、β=(−1−√7i)/2とおけば、
p(n)=A×3n-1+B×αn-1+C×βn-1 が得られます。
A、B、Cはp(1)=A+B+C=0、p(2)=3A+αB+βC=0、p(3)=9A+α2B+β2C=2より、
A=1/4、B=(−7+5√7i)/56、C=(−7−5√7i)/56
を得ます。よって、a(n)=3×p(n)
=3/4×3n-1+3/56×(-7+5√7i)×((-1+√7i)/2)n-1+3/56×(-7-5√7i)×((-1-√7i)/2)n-1となります。
以上